kii工房について

バブルがはじけかけた平成2年に大阪に住んでいたころ何を思ったか「モノづくりを仕事にしたい」と思い知り合いのかばん職人さんに相談しミシン2台買いました。これは正にポジティブな性格と怖いもの知らずの若気の至り、目標は「サンプル師になること」でメーカーから展示会用の鞄サンプル作りを受け、仕事にしようと思いました。当時それを仕事にしているのはごくわずかでした。ミシンを買ったものの糸の通し方や図案から型紙の引きかたもわからず、独学でミシンと悪戦苦闘し、どうしてもわからないときは夜職人さんに聞きに行きました。職人さんは嫌な顔をせず丁寧に教えてくれました。今の自分があるのは職人さんのおかげだと感謝しています。試行錯誤の毎日でしたが、やがてメーカーや問屋からの依頼が入り大忙しの毎日となりました。

平成3年世の中バブルの崩壊が加速し数年前に買った家が一時は3倍くらい跳ね上がりましたが2倍くらいまで下がりました。「これではあかん決断するのは今や」サンプル師ならどこでもできるので「田舎暮らしをしよう」と思い移住する場所をあちこち探しました。その結果たまたま不動産屋さんに紹介してもらった家から窓を開けたら琵琶湖が見えました。「これや」と思い一家5人で移住しました。いままで経験したことのない自然、ご近所さんとの付き合いなど「移住してよかったなあ」と、、恐らく琵琶湖が見えなかったら引っ越ししていなかったでしょう、、(数年後には竹藪が大きくなり琵琶湖が見えなくなっていました。)

人間万事塞翁が馬

やがてメーカーからまとまった鞄づくりの生産依頼が入り生産数をこなす仕事が本業になり
忙しい日々を送るようになりました。しかしバブルが崩壊し海外産の安価なかばんが出始めそのあおりで加工賃の値下げが始まり今までの収入を確保できなくなり生産力上げるため働く時間の延長しか考えられず、毎日休みなしで夜遅くまで働きました。

高島帆布との出会い

下請けでいる限り自分で加工賃を決めることができない商売はやっていけないと思い下請けを辞め自分自身で考案したオリジナル商品を作って直接お客さんに販売しようと思いました。

商工会に相談に行き鞄の生地を織っているいる機屋さんを紹介してもらいました。高島帆布との大きな出会いがありました。高島へ移住したものの織物の町だとは知っていましたが帆布の産地とは知りませんでした。

考えた商品は職人として持っている技術を結集した商品づくりをして京都の百貨店のイベント販売に参加しました。また店舗を借り販売しましたが、売れ行きはもう一つでした。

付属や金具、ポケットなど凝りすぎて価格が高くなりお客さんとの感性にずれがあったと思い新たな挫折が始まりました。

「もうこれまでか」と思いましたが家内と話し、頭の中をリセットしもう一度原点に戻りここにしかない素材を使いシンプルで飽きの来ないデザイン性にとんだモノづくりをしようと思って作ったのはこのかばんです。

地元滋賀県高島市で織られいる4号綿帆布です。10番手の糸を縦6本横糸5本を撚り合わせて織られた厚手で耐久性の優れた帆布です。織り終わった状態で生機(きばた)と呼ばれている帆布で昔は柔道着、テント、体育のマットなどで使用していました。持ち手は4ミリ厚の厚手のヌメ革を使っています。kiiは焼き印をしています。

また染めたカラー帆布も大きさを変えバリエーションも増やしました。

高島帆布について

滋賀県高島市は琵琶湖北部に面して森と湖に抱かれた風光明媚で自然立地条件が備わったところです。伏流水が湧き出る水の郷として知られ琵琶湖に注ぐ三分の一はこの辺りから生み出されたといわれています。豊かな水と湿潤な気候をいかし高島市は古くから織物の生産が盛んに行われてきました。帆布とは綿や麻の細い糸を何本も撚り合わせて平織にした厚手の布のことで耐久性に富み通気性や吸湿性にも優れているのが特徴です。

高島帆布はその品質の良さから江戸時代には琵琶湖に浮かぶ帆船の帆や戦前戦後にかけては水をくむバケツやテント、体育のマット、柔道着、近年では産業用資材、鞄、靴、アパレル、スポーツ衣料など幅広く使われていましす。

クラフトフェアーとの出会い

作るだけでは在庫になる一方なので販売方法も考えねばなりません。道の駅やフリマなどで販売しましたが「何か違う」すでにネット社会になっていていろんな情報が家にいても入ってくようになり、個人の手作り品のみ販売できるクラフトフェアーの存在を知りました。

最初に参加したのは岐阜駅及び隣接施設で開催されたGIFUクラフトフェアーでした。陶器、ガラス製品、アクセサリー、木工品、衣料、鞄など多種多様な商品を全国からクラフトマンが集まり販売する個人のモノづくりのイベントです。お客さんは愛好家多く自分好みの商品を求めてお気に入りの店に集まります。初参加の時は商品の完成度が低かったのでそれほど売れませんでしたが、なんとなく明るい方向が見えてきた気がしました。他のイベントにも参加するようになり売れるようになりました。GIFUクラフトは2023年で21回連続開催されています。kii工房はその時から16年連続で出店しています。

毎年少しずつ新作を作り構成を変えています。毎年リピーターのお客さんも増え以前にお買い上げいただいたかばんをよく見るようになりました。作り手がお客さんと対面で商品説明をして販売してお客さんに喜んでもらえればこちらもその笑顔で嬉しく元気になります。

地元高島産へのこだわり

地元高島の帆布にこだわり生地・素材・柄・色を独自に機屋さんと考案し他では作ることができない商品づくりを目指し、現在200以上のアイテムすべて地元高島で織られた帆布を使用し鞄を作っています。

たくさんの人に興味を持ってもらおうと土日祝のみの営業ですが(平日はみんなで作っています)11年前に自店舗を長浜でオープンしました。今では多くのリピーターさんにお越しいただき大変嬉しく思います。

また実際にかばんを見て触って持ってもらい、お話をして帆布かばんの素晴らしさを知ってほしい思いから出会いの場を求めて北海道から九州まで月2回ほどイベントに参加しています。

自分の作った商品をたくさんのお客さんが笑顔で買っていただいたら嬉しいです。今ではイベントに来られたリピーターのお客さんが「このかばん11年前に買ったよ」と自慢げに声をかけて見せていただいたときは作り手冥利に尽きます。

人の生活、暮らしに役立つカバンを自分の手で作ることができるのはさらなる喜びです。

私と家内が立ち上げた工房ですが、小さい時から親の背中を見て育った子供たちが大きくなりみんなで、職人を兼ねてスタッフとして頑張っています。モノづくりを仕事にしている以上年齢に関係なくアイデアや創造性を豊かにし実践して自分自身満足感を楽しみたいと思います。

ぜひたくさんの方にkii工房長浜店、各地のイベントにおこしいただき帆布カバンの素晴らしさを見て触って実感していただければと思います。  

帆布カバンのお手入れや修理について

  • 洗濯機はお避け下さい。
  • 少々の汚れは市販の消しゴムや100均で販売しているアルカリ電解水やメラミンスポンジを使えば落ちる時があります。
  • 醤油、油、コーヒー系の汚れは落ちにくいです。      
  • 次におすすめは中性洗剤を少し薄めて布にしみこませ叩きつけて落とすか、ブラシで上下左右方向を変えてブラッシングしてください。全体的に汚れてきたときは革を濡らさないようにして中性洗剤を薄めて上記の方法で水をふき取りしわをのばし、日陰干しをしてください。
  • 一番のおすすめはお買い上げ後直ぐに防水スプレイ(布、皮革用のフッ素系樹脂)を使用頻度によりますが月に一回程度定期的に使用してください。
  • スプレーをするときは換気のいい場所で念のために目立たない箇所で試してください。
  • 長期保管する場合は湿気にご注意してください。
  • 長時間の直射日光はお避け下さい。
  • 帆布や革は天然由来の素材なので経年にわたる変化も含めて風合いを楽しんでいただけたら嬉しいです。

■帆布かばんの修理について

明らかにこちらのミスで販売したときは送料、修理代は無償にて修理または交換させていただきます。

経年劣化やお客様の使用頻度の状況とまた一部修理不可能な場合をのぞいて有償で修理させていただきます。オンラインショップのお問い合わせからご連絡ください。

できましたら修理箇所、鞄の型がわかる全体の写真を添付していただければ、見積もり他対応させていただきます。または長浜店までお持ちいただければ対応させていただきます。

他社様の製品はできませんのでご了承ください。

kii工房の帆布かばんを末永く使っていただきたいのでお気軽にご相談ください。